骨粗鬆症
骨粗鬆症とは?
  
骨は、絶えず古くなった部分を壊し(骨吸収)、新しい骨に作り替え
  て(骨形成)、強度を保っています。これが骨代謝です。
  骨粗鬆症とは、骨形成と骨吸収のバランスがくずれ、骨の量が減少
  すると同時に、骨の質が低下することにより、骨の強度が低下し、
  もろく、骨折しやすくなった状態のことを言います

   
骨量は年齢とともに減少します
  特に女性は、閉経後、女性ホルモンの減少とともに、急速に
  骨量が減少します。
  50歳以上女性の4人に1人、70歳で半数以上が骨粗鬆症です。
  あなたの骨は大丈夫ですか?
          加齢による骨量変化(女性)
   

骨粗鬆症の原因
  加齢 
  
女性ホルモン不足(閉経後、卵巣機能障害)
  
遺伝・体質・やせ
  
栄養不足(カルシウム、ビタミンD、ビタミンK、タンパク質など)
  
生活様式(運動不足、日光不足、喫煙、飲酒、コーヒー)
  
胃切除後
  
ある種の病気(関節リウマチ、甲状腺機能亢進症、糖尿病など)
  
薬の副作用(ステロイドなど)

骨粗鬆症の症状
  背中や腰が曲がったり、痛くなる
  
ちょっとしたことで骨折する
  
背が小さくなる
    

骨粗鬆症により骨折しやすい部位
  背骨    脊椎圧迫骨折
  
手首    橈骨遠位端骨折
  
脚の付け根 大腿骨近位部骨折(転子部骨折・頸部骨折)
  
腕の付け根 上腕骨近位部骨折
    
 
 脊椎圧迫骨折 橈骨遠位端骨折 大腿骨転子部骨折 大腿骨頸部骨折 上腕骨近位部骨折

  整形外科専門医は、それぞれの骨折に応じて、適切な治療法
  (ギプス、コルセット、手術など)を選択します。

  日本における高齢者寝たきり患者の原因疾患は、脳血管疾患に
  次いで、骨粗鬆症・骨折が第2位です。特に大腿骨近位部骨折は
  寝たきりの原因になりやすく注意が必要です。2014年には、年間
  約20万人の大腿骨近位部骨折が発生しており、今後更に増加すると
  考えられています。

  脆弱性骨折(ぜいじゃくせいこっせつ)
   一般的に骨折は、転倒・転落などのケガにより発生しますが、
   骨粗鬆症の場合、明らかなケガをしていないのに、日常生活で発
   生する、骨粗鬆症性疲労骨折(脆弱性骨折)というものがあります。
   これまでに私が経験した部位は
    背骨(脊椎)、あばら骨(肋骨)、骨盤(恥坐骨、仙骨)、
    脚の付け根(大腿骨頸部)、膝の内側(脛骨内顆)、
    足首の内側(脛骨遠位部)、かかと(踵骨)、前腕(尺骨)などです。
   高齢者で、何もしないのに骨が痛くなった場合、脆弱性骨折の
   可能性もありますので注意が必要です。

骨粗鬆症の診断
  さまざまな検査を組み合わせて、総合的に診断します。
  
問診・診察    
  
エックス線検査
   骨梁(カルシウム線維)の状態から、変形や萎縮度を読み取ります。
  
骨量測定
   測定法にはDXA法、QCT法、MD法、超音波法などがありますが、
   当院では、最も信頼性の高い、躯幹骨DXAを備え、腰椎・大腿骨
   の骨密度を測定しています。
  
血液・尿検査
   骨の状態を調べるため、或いは症状が似ている他の病気と鑑別
   するために行います。
   骨代謝マーカー検査は、どれくらい骨が壊れたり作られているか
   を調べたり、治療薬の選択や治療効果の判定をする上で重要です。
  
MRI検査・CT検査
   骨折の有無や程度、背骨の骨折による脊髄の圧迫などの確認、
   或いは他の疾患との鑑別に有意義です。
   先に述べた脆弱性骨折は、MRI検査をして初めて診断できる
   場合もあります。
  
骨シンチ検査
   他の疾患、例えば骨の腫瘍や炎症との鑑別に有意義です。

  原発性骨粗鬆症の診断基準
   20〜44歳の若年成人正常値と比較し、骨量が70%未満の場合、
   あるいは80%未満でも脆弱性骨折がある場合、骨粗鬆症と診断
   されます。

  骨粗鬆症によく似た症状を示す病気に注意
   変形性脊椎症・脊柱管狭窄症・脊椎椎間板ヘルニア・
   脊椎すべり症・脊椎分離症・骨軟化症・多発性骨髄腫・
   転移性脊椎腫瘍(癌の転移)・内分泌疾患・骨Paget病 など

骨粗鬆症の治療・予防の意義
  骨粗鬆症になっただけでは症状はありません。
   高血圧症や高脂血症により脳卒中や心筋梗塞を合併するのと同じ
   く、骨粗鬆症の合併症である骨折を予防、治療するのが目的です。
  
そのためにはどうするか?
   
転倒しても骨折しにくくする
    ・骨を丈夫にする
      治療薬
      生活習慣 食事・嗜好・運動・日光浴
    ・ヒッププロテクター
      装着することにより転倒時の衝撃を和らげる
      有効であるが、継続性に難あり
   
転倒しにくくする

骨粗鬆症の治療法
  薬物療法
         
   A.ビスフォスフォネート製剤
   B.選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)
   C.活性型ビタミンD製剤
   D.デノスマブ
   E.テリパラチド
   F.抗スクレロスチン抗体
   G.カルシトニン製剤
   H.ビタミンK製剤
   I.カルシウム製剤
   *A:経口剤(1錠/日、1錠/週、1錠/4週、1錠/月の製剤あり)
      注射剤(4週に1回、月に1回、年に1回の製剤あり)
    B,C,H,I:経口剤
    D,E,F,G:注射剤
   当院では上記薬品を症例に応じて処方し、治療しています。
  
生活習慣
   
食事 
     
    ・カルシウム、ビタミンDの十分な摂取
     カルシウムは一日最低600mg、出来れば800mg以上
      カルシウム豊富な食品
       乳製品  牛乳・スキムミルク・プロセスチーズ
            ・ヨーグルト・アイスクリームなど
       魚介類  干しエビ・小魚など
       大豆製品 豆腐・納豆・生揚げなど
       野菜   小松菜・チンゲン菜・ゴマなど
       海草類  ひじき・わかめなど
      ビタミンD豊富な食品
       きくらげ・しいたけ・サケ・ウナギ・サンマ・
       卵黄など
    ・適量のタンパク質、マグネシウム、ビタミンK摂取
    ・インスタント食品にはリンが含まれていることが多い
     ので、とりすぎに注意
    ・ダイエットに注意
    ・タバコを吸わない
    ・アルコール・コーヒーのとりすぎに注意
   
運動
   
日光浴 
                   
転倒予防
  年をとるにつれ転倒しやすくなる
   筋力の低下・柔軟性の低下・バランス感覚の低下・反射神経の低下
  
運動指導
   
筋力訓練 
   
ストレッチ 
   
バランス訓練 
   
歩行指導
  
生活指導
    
   整理整頓
    つまずきやすいものを置かない
    電器コードや座布団、じゅうたんのへりにも要注意
    家具のぐらつきの点検
   手すり・滑り止め・段差対策
    廊下や床、階段などには、できるだけ手すりや滑り止めをつける
    部屋と廊下の間の段差はなるべく少なくする
   足下を明るく
    部屋、廊下、階段などに常夜灯をつける
   浴室・トイレ対策
    浴室内は手すりをつけたり、イスを置いたりする
    和式トイレはできれば補助便座などで洋式にする
   外出時も十分注意を
    はき慣れた靴、すそさばきのよい服装で出かける
    ふらつきやすい人は杖を使用する
    夜間や天候の悪いときは外出をさける
    雪道に注意
     凍結路面の歩き方
      重心を前にし、小さな歩幅で、足の裏全体をつけるように  

 骨粗鬆症の認識を深め、生活習慣を見直し、
 適切な予防・治療を行うことにより骨折の発生を減らし、
 元気な高齢化社会をめざしましょう!

 尚、このページでのイラスト使用は、武田薬品工業株式会社の了解を得ています。
    

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